電話の思い出(9) 携帯電話黎明期 3月2日 青野正宏
携帯電話を初めて利用したのは、関西空港建設時である。航空管制システムの現地調整の仕事を担当していた。建物はできていて、システムの機材も搬入、電気も通じていたので作業はできるが、本土と関西空港島を結ぶ橋もまだできておらず、対岸の町のホテルを定宿として、バスで港まで行き船で通っていた。まだ島内では電話網ができておらず、事業所内に数台しかない携帯電話の1台を借りて、現地に持ち込み特定の場所に据えて固定電話的に据えていた。もちろん毎日宿まで持ち帰ってはいたが。ただし、通話料が高いのでやむをえないときのみ使用し、通常の連絡は宿に戻ってから従来の固定電話網を使うということにしていた。そのうち、いろいろ整備され、橋も架かってバスで直接行き来できるようになったが、電話網の整備は遅れていた。そのとき、誰かが必要あってバスのなかから携帯電話で連絡しているのを見て、理屈ではわかっていたが、ああ移動中に電話ができるのだということを実感した。今ならバスの中で携帯電話を使おうものなら顰蹙ものであるが。