芥川賞発表 バリ山行を読んで感じること 8月30日 御法川齊

 ご存知の様に小説家の登竜門、受賞者2人とも40代前半。2人共、仕事好き(医療、建築技師)で、散歩、自転車ツーリング、登山が趣味で思索の場がある共通点あり。所以、不条理でままならない世の中での生き様をテーマにしている。将に現代の世相を反映。

 日経広告に松永K三蔵「バリ山行」が出た。山と聞いて 連載小説・登山大名に次いで当然読もうと決心し購入。純文学は読まないのだが、今回は奇妙なタイトルに触発されたのと暑熱を避けて冷房書斎で読みました。 95ページに亘り、技術系の小生にとっては出だしのが稍冗長でじれったかったが、を過ぎ転結は流石に引き込まれた。その前にバリ山行なる言は初耳でバリエーションのバリの由。単に山行を丁寧に執拗に描いたばかりでなく、同時にその背後にある心理面の変化を描き出した点に感心した。
 でも結は現代の混沌とした世界情勢と一部の身勝手な政治リーダー連に翻弄される人心をシニカルに映し出した奥深いものかも知れないと期待したが外れ。作者が何処まで熟慮したか?知りたいものであったが、その痕跡が無かった。でも審査員の講評でも其処までは期待していない内容だったのも残念。
スマホで検索したら東京新聞文化芸能部も座談会形式で批評している。小生の注目作でない「サンショウウオの四十九日」は 結合双生児を扱ったファンタスティックな世界で小生には馴染めない世界であった。