講演会「ヴァイオリンと私」のレビューに代えて
8月31日 桑井 旭
昨年のNHK大河ドラマ第61作『鎌倉殿の13人』は三谷幸喜脚本で久しぶりに面白かった。 源頼朝が挙兵してから 北条義時の承久の乱までの40年以上にわたる時代を描いて、鎌倉の知名度を教科書の存在から、日本中に知らしめた。(経済効果307億円横浜銀行試算)私も毎週欠かさず観て、録画2回目は演技や演出の詳細を鑑賞させて貰っていた。
特に一番興味があるのは、「番宣」で紹介される「舞台裏」での、試行錯誤の経緯や工夫とトラブルの解決がいつも面白くて為になった。そこで、過日の五味俊哉氏の「ヴァイオリンと私」について、ビッグイベントではないが、細やかな舞台裏をレビュー報告する事にした。
■飯田代表から五味氏に、講演依頼が来たのは開催の3カ月以上前の4.月7日であった。五味氏は銀行勤務と演奏家の2足の草鞋で超多忙なるが故に、会との連絡係りはヒマな私が取る事になった。やがて、飯田氏から当日の進行司会も任されてしまった。その上、会としては会員の為に歴年「講演」を開催しているので、あくまで「演奏会ではない」と念を押された。一方、五味氏からは、当日の講演用PPT作成は「桑井さんに任せる」という。
■当方としては、五味氏のバァイオリン演奏を抜きにしての講演で、五味氏は何を語るのか? その上、クラッシック音痴な自分が、五味氏の立派な半生をPPT化することなど、NHKプロデューサでも無い非力な自分には荷が重すぎた。よって、ある早朝、飯田氏にTELする前に、五味宅にTELで、「この度の講演企画はやはり、自分には不向きであるから降ろして貰いたい」と。
「そうですか それは残念ですね」と即答するであろう事を半分期待していた。すると、五味氏曰く「バァイオリン演奏よりも、実はトークの方が得意なんです」と。この殺し文句?に1本獲られてしまった。(さすが180名の団員をマネージするコンサートマスター説得の弁)
■やがて、飯田氏より、演奏曲も5〜6曲入れる理解が得られ、着手する運びとなった。以前より、鎌倉市内の五味氏の大小演奏会に行ったことはあったが、生の演奏現場を「追っ掛け」しようとしたが、五味氏の演奏頻度は半端じゃなく、ご自身が「怒涛のスケジュール」と云うが如く、殆ど対応しかねた。
幸い会員で写真班の根本唯雪女史が、以前より五味ファンだったので、LINEで3名の「8.13チーム」を作り、連日情報交換をしたのが大いに奏効した。(ヴァイオリンに顎を乗せたままで LINE作成しているのか?と思う程、とにかく回答が早い! また 演奏案内も連日送られて来る)
■「ヴァイオリンと私」と五味氏が命名、サブキャッチの「いつでも どこでも 一人でも」は小生が提案。(大勢に影響のない細かい修正部はほとんどしない 西郷ドンのような稀に見る誠実な大物のようでもある)
■「講演会案内チラシ」の採否は1転2転した。
事務局としては、会員向け案内チラシであれば、A4版モノクロで、且つ、鎌倉市教育委員会の推薦の要件を満たせばOkであった。しかし、演奏会を予告案内に挟んで配布するチラシ類も、最近はプロの演奏案内の様に立派で、演奏会専門のチラシデザイン業者が制作するように完成度が高い。事務局としては今後に恒例を残し、印刷費やデザイン費で足を出すのではと当初NG。(当然のことではある)そこで、デザインの心得のある我が娘を説得し、数案作成して貰い、印刷費はプリントパックという業者に依頼すれば、格段にコストが安く作成出来ることに納得して、今回は例外的に実施をすることにして頂いた。
■光沢あるチラシが完成して送られて来てみると、今まで漠然と描いていた「講演奏会」が鮮明にイメージされて五味さんも大喜びなので、家族や友人に転送したい衝動に駆られたが、まだ教育委員会の推薦許可が下りるまではと辛抱。かくして、「講演会」はいつの間にか「講演奏会」へと進化して行った。
■■五味氏に関する関連諸情報は、略歴から嗜好、作曲家と曲の由来、裏話などは、目下世界的ブームで導入されている、超便利な「生成AI」によって、すべて検索しそれを共有した。
■PPTのどこのページで参加者の感動と納得を得るか、活動のハイライトをどのように当てるべきか・・・それは意外と容易なことであった。世界中に余多あるアマ交響楽団のコンマスがやっては居ない、イヤ、出来ない五味氏の「いつでもどこでも 一人でも」の実践と実績の多さにある。
それを自分で度々目の当たりにして、蓄積されている写真も沢山ある。しかも、大半がノンギャラのボランティアだという。「得意のトーク!」はお任せした。(素朴な語り口は、大いに好感が持てたという感想が、終了後異口同音に出た)
■1週間前8.3、機材を運んでの現場リハーサルも済んだ。
さて当日、休憩後の冒頭に当方が前口上した。
「皆さん!五味さんの「ボランティア演奏活動」は様々な場所で行われています。都市のピルの景観を背景に、 鎌倉仏閣の緑の木立の中で、 鎌芸術館の大ホールの定期コンサートの大舞台で、そして、寒い冬の夜本郷台駅前で一人で淡々とバヴァイオリンを演奏する五味さんの姿がありました・・・」と。
(自分なりに練習して来たがプロアナの如く上手くないナ〜と、気をとり直して後半を開始)
■演出する以上は、何か今迄に無い「プチ・サプライズ」を準備しなければ気が済まない。そこで、当方提唱の「ハモオケ」を、「バイオケ」(ヴァイオリン&オーケストラ)と高度化し、五味氏に適用の同意を貰い、鎌饗の定期演奏会HPのから威勢の良い「歌劇カルメン前奏曲(闘牛士)」の曲に、特設バイオリンの「上乗せ演奏?」を興じて貰った。この「バイオケ」をやる為に、パナソニックの高音質ブルートゥーススピーカと重たい富士通27型パソコンも購入した。
■講演も順調に進み、やがて、最後の勝負所である、ピアノ伴奏に代わっての最後の「アンコール」は「ヘンデル作 ヴァイオリンソナタ」とした。果して観客はどんな最後の反応を示してくれるか、自分にとっても最大の山場の様に思えて、演壇右隅に寄って固唾を飲んだ。曲が始まると観客は一瞬息を呑み、その後曲の流れに聴き入っていた。自分も聴き入った。五味さんの演奏も板についていた。どの曲が良かったかのアンケートを取るまでもなく、やはりアンコール曲なのだなと、ド素人ながら思った。(大拍手)
■最大のリスクであった台風7号の余波で、当夜半もまだ雨天が続いており、「鎌倉市の1時間天気」を夜中に何度も検索した。若しこのまま降雨が続けば、事務局に問合せが殺到し、参加者は少数に留まり、数カ月仕掛けた苦労は水泡に帰す。しかし、天は我らに味方した。
「講演奏会」中の窓外の雷雨すらも、やがて「雨あがる」(山本周五郎・調)となり、重いパソコンを運ぶトランクがゴロゴロとゴム車を鳴らして、五味氏と共に、関係者が集まる駅前のイタリアン料理「サイゼリア」へと向かった。
■後日、事務局からは、お盆のこの時期ながら、参加人数はほぼ予測通り51人(内一般参加は28名)で、今までで最も多人数だったとのことであった。
関係各位のご尽力の下 成功裡に終わった事を五味氏と共に感謝しております。
講演チラシ
撮影動画前半部 https://youtu.be/3hTaZTWkGT4
撮影動画後半部 https://www.youtube.com/watch?v=iAHg6XafTvw&feature=youtu.be
講演画面
講演の様子1
講演の様子2