カッコウと鷹 6月9日 飯田朝明
鶯の鳴き声についての御法川さんの記事を読んで、カッコウの鳴き声や30年以上前に住んでいた多賀城や仙台のことを思い出した。
私は、昭和63年3月から平成2年3月までの約2年間、仙台市の北東側に位置する多賀城市に妻子4人で住んでいた。この町は仙台から石巻に向かう仙石線に乗り換えなければならず、東側に太平洋があった。太平洋は南側にあり、東京は北東方にある神奈川県とは位置関係が真逆に近いので、当初は大いに戸惑ったものだ。
多賀城には五階建ての集合住宅が20棟近く建っていたが、私の住まいは、その一つの、階段だけのエレベーターもない建物で、最上階の5階にあった。つまり、通勤や子供の通学を含めた外出はすべて、この階段を上り下りするほかなかったのである。また、住宅の敷地の隣は陸上自衛隊の基地になっていたので、その付近一帯は緑豊かで閑静な地域となっていた。
そこに住み始めてからしばらく経った初夏のある日、朝方寝床でうとうとしていると、カッコウ、カッコウという声が聞こえてきた。今まで実際に聞いたこともなかった声がいきなり聞こえてきたので、エーッと思いながら、それがカッコウの鳴き声だと気付くのにあまり時間はかからなかった。そして、だんだん自分が深山に引き込まれて行くような気もしてきた。東北の早朝に、辺り一面に響き渡るこの鳴き声を聞きながら、顔はまだひんやりした空気の中にありながら、肩から下の布団に包まれた身体には血液がよく巡ってとても心地良かった。この体験は、自分が関東に住んでいた時にはあり得ないような貴重なもので、東北ならではことだと思ったのである。
ところで、カッコウは、日本では「郭公」や「呼子鳥」とか、私には少し驚きだが、「閑古鳥」とか書き、その鳴き声は古来寂しいと受け取られてきたようだが、ヨーロッパでは「春告げ鳥」とも呼ばれ、「かっこうワルツ」のような軽やかでリズミカルな曲とともに、その鳴き声は好まれ、喜ばれている。また、冬を南方で過ごしたのち、日本へは5月ころやって来る夏鳥でもある。
鳥については、もう一つ驚かされたことがある。
仙台の町に出かけ、高層ビルのかなりの上層階に上ったとき、窓の近くを鷹が飛んでいるのを見付けたことである。それもかなり近かったと感じたのだ。仙台は杜の都と言われるくらい街路には緑も多く、青葉山という樹木に覆われた大きな緑地もあるが、こんな町中にまで鷹が出現するとは思いもよらなかった。東京や横浜では、ちょっと考えられないことだと思ったのである。