現代版「わらしべ」物語 9月20日 河崎 啓一
ことのおこりは、妻の遺愛の品を整理するなかで生まれた、
「感謝離―ずっと夫婦」という500字ばかりのエッセイが、
朝日新聞に掲載されたことから始まります。2019年5月9日、
大船まつりで街が華やいでいる日の朝刊でした。
思いもよらず、これが大きな反響をよびます。新聞社
に手紙や電話が殺到、サイト上にはツイッターが舞い、
リツイッターは10万を超える。「断捨離」提唱のやました
ひでこさんが絶讃、朝日新聞は全面の特集を組み、ラジオが
朗読、テレビ放映、そして出版社が動きます。
明けて2020年3月、やはり夫人を亡くされたばかりの田原総一郎氏と
対談。奇しくも家内の一周忌にあたる3月19日、双葉社より
「感謝離―ずっと一緒」が刊行、22日には田原氏との対談が
掲載された「婦人公論」が発売されました。
およそ一年にわたって繰り広げられた騒ぎが一段落と見た
大元の新聞社は、5月はじめ「投稿から本誕生」という
記者署名記事を写真入りで載せ総括したのでした。
ところが、それから旬日も経ったか経たなかった日のこと、
双葉社から電話がかかってきました。
「映画化のお話が来ています。どうしますか。」
「エツ、エエツー」
思えがこの叫びをこの一年何度発したことか。
おまかせするしかありません。企画は順調に進み、
8月末クランクアップ。9月8日プレス発表。11月6日封切で発表されます。
いよいよこれで後はないでしょうか。
この映画の監督小沼雄一氏によれば、絶対無いのは
「人は死なない」ということだけであって、ほか、例えば1+1=2も
絶対とは言えないそうです。ではこの先何が考えられる?
ヴェネチア、カンヌの映画祭? まあご自由に。