今泉七久保橋交差点にある太田屋商店前に集合し、宮の前方面に向かう。大船方面から今泉・今泉台に向かう道は砂押橋から入るのがメインルートであるが、宮の前方面を経由する道も間道として、大船駅からむしろ近道なのであまり広くない道であるが交通量は結構ある。宮の前方面に100mほど進むと正面にトンネルが見えてくる。左手は岩瀬中学校である。この構図の場所は平成28年2月に開催された新旧鎌倉を比較する写真展(鎌倉を見つめた写真家たち)のポスターに使われた場所で、元々は鬱蒼とした森のなかの道であったが、昭和42年当時は開発中で土がむき出しの状態であった。現在は岩瀬中学校の樹木で緑が半分回復している。
岩瀬中前のトンネル 天ヶ谷戸池
トンネルを通りぬけると左に天ヶ谷戸池が見えてくる。元々は用水地で風情のあった池であった。現在は、池の表面は蓮で埋め尽くされており、遊水地としてコンクリートで固められており風情はあまり感じられない。この池は大船地区を流れる3本の川のひとつである梅田川の水源池となっている。
天ヶ谷戸池傍を通りもうひとつトンネルを潜り、熊野神社前にでる。トンネルを出たところで、右に曲がり多聞院の駐車場前を通り、今潜ったトンネルの上を通る尾根道の入り口に立つ。ここから尾根道を登り始める。
ここから登る尾根道100mほどは、後述する長窪の切通と並んで鎌倉の切通のなかで最も切通らしい雰囲気を持った切通である。この切通のことを「高野の切通」と呼ぶ資料もあるが、「鎌倉景観百選」では「長窪の切通」のことを「高野の切通」と呼んでいるので、ここでは混乱を避けるため、「多聞院裏の切通」と呼ぶこととする。切通部分を過ぎると尾根道右手下に多聞院墓地が見える。多聞院墓地は多聞院背後に隠れた小さな谷戸となっている。尾根道左下は天ヶ谷戸(尼ヶ谷戸)の奥となる。
多聞院裏の谷戸 多聞院墓地
尾根道を進むとやがて大船高校グラウンド下に達する。右手の後述する六国見山道標からの道と合流し、大船高校グラウンド脇の道を登って行くと、高野ロータリーに達する。このロータリーは鎌倉街道からのバス道路の終点である。左手に今泉方面に降りる道、直接六国見山に登る山道もある。今回は六国見山の山裾を巡るように南東方向に進む。途中に左手に六国見山の西登り口の階段を見て、さらに右手に大船の街を見て南登り口まで進む。
高野ロータリー 高野の山際の道を進む
六国見山西登り口 大船の街を望む
ここで住宅地は途切れ、その先に畑作地が広がっている。左に六国見山、右手に比丘寺山(大貫昭彦著「鎌倉路地小路かくれ道」にこの名が出てくるがウラはとれていない。) に挟まれ、奥は樹林となっているので、一見谷戸に見える。この畑地を進むとやがて右手下に円覚寺の塔頭が見え隠れする。尾根まで登ったわけではないのでこの畑地は谷戸でないことがわかる。農作業をしている人に地名を確認したが長窪というらしいということまでは分かった。さらに進むと六国見山から北鎌倉円覚寺と明月院の間の古山稲荷に達する道にぶつかるが、そこまでいかず引き返す。
長窪(住宅側から奥を望む) 長窪(奥から住宅側を望む)
高野住宅地の西端の道からバス道路を高野自治会館の前まで下りる。ここから左の台の杜(うてなのもり)と呼ばれていた住宅地に入る。この地は最近になって宅地化されてしまったところである。150m程度進むと台亀井公園があり、ここから亀井の谷戸の全容を見下ろすことができる。
亀井の谷戸(入口側) 亀井の谷戸(奥側)
ここで引き返し、高野自治会館の前からバス道路を横切り、まっすぐ進むと長窪の切通である。この切通は鎌倉景観百選にも選ばれたところで、鎌倉の切通のなかで尤も切通の特徴が出ているところである。今歩くとちょっと信じられない感がするが、ここを農作業用の車が通っていた。多聞院裏の切通も同様であるが、この切通は名越や朝比奈の切通のように峠を越えるための切通でなく、尾根を切り下げて造った道であるので、人間が通るためだけに作った切通でないのかもしれない。いろいろな資料を見てもいつ作られてか判然としなかった。平成28年現在、この切通が安全のため取り壊されるという話が出ているのが残念である。長窪の切通を過ぎてしばらく進むと、左高野経由六国見山 右長窪経由六国見山の道標がある。降りる方向に進んでいるので左右逆であるが、右手に進むと前述した大船高校グラウンド下に達する。
長窪の切通 長窪の切通入口(下より)
道標を過ぎてしばらく進むと左手に鳥居が見えてくる。この鳥居の上には祠も残っているが、熊野神社に合祀してしまったそうで神社の抜け殻である。左手の先に辻遊水地がある。昭和29年の地図を見ると辻池が記載されているが、その池は現在の水道庁ポンプ所のところにあり、位置が変わっている。
神社の抜け殻の鳥居 辻遊水地
宮の前の旧道に出て、高野に行くバス道路の下、小坂小学校の前を通って、鎌倉街道に合流する少し手前に右側の道に進む。これを真っ直ぐ進むと、台亀井公園から見下ろした亀井の谷戸に入る。台の杜が宅地化される前は鬱蒼とした谷間であったと思われるが、台の杜が宅地化されると妙に明るくなってしまい、風情がなくなったと引っ越しした人もいたそうである。 亀井の谷戸から引き返し、宮の前の旧道に戻る少し手前に人や二輪車しか通れないトンネルがある。このトンネルは「素掘りのトンネル」として鎌倉景観百選に選ばれている。このトンネルを潜ると横須賀線線路際の道に出る。
亀井の谷戸(下から) 素掘りのトンネル
この道は八雲神社の下にあることから宮下小路と呼ばれている。途中に小八(幡)神社に立ち寄り、権兵衛踏切の前まで進む。ここから大船高校の通学路ともなっている高野方面に進む谷戸と八雲神社に登る谷戸がある(善応寺谷)。
小八神社 善応寺谷
八雲神社まで進む。八雲神社には社の外、庚申塔群、晴明石などがある。ここからは山ノ内西側の眺望が良い。
本来の予定はこれから山ノ内西側の路地や台と台峰の間にある谷戸に進む予定であったが、予想以上に時間がかかったため、ここでこの日の探訪は打ち切り、八雲神社の階段を降り、通行不能となっている北鎌倉駅裏のトンネルを見て、小袋谷踏切近くまで戻りファミレスで遅い昼食を摂って解散した。
八雲神社 通行止めの駅裏のトンネル
2016-5-23北鎌倉谷戸探訪記録
案内チラシ