国道134号線ー松と砂浜のみち(3) 11月22日 飯田朝明

3 浜と海岸など
 134号線の藤沢市片瀬以西は砂浜が発達していると述べたが、そうとばかりは言えず、近年その砂浜がやせ細ってきている。
 大磯の照が崎付近の海岸も一昔前は、砂がたまりやすい場所では波打ち際付近でも1メートル以上盛り上がっていて、もっと陸側は砂丘状になっていたことを覚えている。その上には砂を採取していたのか、砂の上に広げて干す漁網を運んでいたのか気にもしていなかったが、トロッコとそのレールが敷かれていたこともあった。また、照が崎の当時の大磯漁港は、磯が埋め立てられて今はもっと大きい港になっているが、北東側の北浜海岸も西側のこゆるぎの浜も随分砂浜が狭くなったという感じがしている。また、茅ヶ崎でも今はサザンビーチと呼ばれている海岸では、以前より60mくらい砂浜が後退していると言われている。
神奈川県の2つの大河である相模川と酒匂川は、静岡県を源流に山地を下り平野部を流れて相模湾に注いでいるが、その流水と共に土砂を運んで来て、それが砂浜を造るため、こうした砂浜の減少はこの両河川の流水量の減少に起因するとされている。その上流に、近年宮ケ瀬湖や丹沢湖という大きなダムが造成されて、水を有効利用したり流水量を調整したりしているからである。
こうした状況下、茅ヶ崎ではかなり前から養浜を行っているが、大磯の西隣の町二宮でも、西湘バイパスが最近風波の強いときは不通になることが頻繁にあるため、テトラポットで砂浜を造成せざるを得なくなっている。
ところで、この地域には「浜」の付いた地名は非常に多いが、古くからあったと思われるものと第二次大戦後に生まれたものとが混在しており、それらは、概ね次のとおりである。
平塚市  虹ヶ浜 桃浜町 袖ヶ浜
茅ヶ崎市 浜竹 緑が浜 浜須賀 白浜町 浜見平 浜之郷
         (浜之郷は東海道線より1キロ以上北方にあり海辺ではないが、その地域の一番浜方にあったため、名付けたとされる。)
鎌倉市  由比ガ浜 七里ガ浜 
横須賀市 追浜 浜見台 久里浜 御幸ヶ浜 

また、「海岸」は今では立派な学術用語になっているが、古典などには出てこないので、おそらく明治期に英語の「coast」を翻訳するなどして造語したのではないかと推測するが、それが入った地名は、次のとおりである。
茅ヶ崎市 柳島海岸 中海岸 東海岸北 東海岸南 菱沼海岸 
藤沢市  片瀬海岸 鵠沼海岸 辻堂西海岸 辻堂東海岸
横須賀市 馬掘海岸

この他にも海に関係する地名は色々あるが、「浦」は地形が入り江状になった浜辺のことで、横須賀市に田浦、浦賀、長浦などがある。なお、これら全部が東京湾岸にあり、相模湾側にはそうした地名はない。
「磯」は磯浜のことであり、大磯町では町名と字名で使われており、「須賀」は海や河川の近くの土地が盛り上がった所であるが、横須賀市や平塚市須賀がある。
また、「津」は船着き場を表すが、鎌倉市津や横須賀市大津町があり、岬を表す「崎」は鎌倉市に稲村ガ崎がある。また、葉山町には長者ヶ崎という岬があるが、地名にはなっていない。
なお、前述した地名のうち、横須賀市の久里浜、田浦、浦賀などは、この地名と同名が入った別の地名とが複数ある。
以上により、134号線の近隣地域には浜や海岸を始め海に関係する地名が多いが、それは当然としても、松の入った地名も多いことが分かった。(完)
(参考) 「フリー百科事典・ウィキぺディア」、「この国のかたち」―文藝春秋発行