潮風が吹くまち(上)  9月17日 飯田朝明

 この文のタイトルは、「潮風が通リ抜ける町」、「潮風満ちる街」、「汐風が漂う町」、「潮風の流れるまち」など考えてみたが、どれも合っているので、結局一番普通の表現にした。
私は相模湾岸の大磯で生まれ、30歳代になって小田急沿線の秦野市に転居し、神奈川の屋根と呼ばれる丹沢山地の麓に30年以上居住したのち、10年ほど前故郷の大磯に戻ってきた。だから生涯のうち、この海辺の町に40年以上住んでいることになる。
 東京方面に出かけて電車で家に帰るときには、平塚市との間を流れる花水川の鉄橋を渡ると広葉樹林に覆われた高麗山が出迎えてくれる。その2分後にはすぐ大磯駅に着くが、大磯の山が海側にせり出した所にあるこの駅に降りると、冬は東京などと比べると2,3度温かく、逆に夏は涼しい。そして、海風が吹いていることが多く、いつも潮の匂いを感じさせるのである。この風は台風などのときは砂や細かいしぶきを運んで来て困るが、日常的には、ほどよく町を包んでいるのだ。(続く)